日本の書類作成に不可欠な印鑑と斜めの関係について

電子データへの移行が当たり前になりつつある現在でも、日本では書類の作成に印鑑が欠かせません。印鑑はその書類の確認や内容への同意を示す目印の意味があります。利便性の高さから広く普及していますが、印鑑への考え方が変化しているのも事実です。

印鑑を深く理解するためにも、日本で普及している印鑑の種類や素材、斜めとの関係について学びましょう。

誕生石を使った印鑑を作ってみよう

古代からの長い歴史がある印鑑

印鑑は日本独自の物というイメージがありますが、その起源は古代の中東地域にあるとされています。約五千年前のメソポタミアで印鑑の原型となった、筒状の道具が作られました。筒の外側に文字や絵を刻み、粘土板の上で転がして転写する仕組みです。

文字や絵を刻んだ印鑑を押して印面を転写させる方法は利便性の高さから世界中に伝播しました。欧州各国では書類や手紙を入れた封筒を閉じた際の印として印鑑を使うようになり、中国大陸では権力者が自身の富と権力を示すステータスアイテムとして用いるようになったのです。

日本には中国経由で漢倭奴国王と称される純金製の印鑑が贈られましたが、これは権力者の身分を示す儀礼的な物であり、実用品としての意味は無かったとされています。日本で現在のように誰でも印鑑を使うようになったのは江戸時代以降です。

それまではごく一部の権力者や富豪だけが使用できる物でしたが、それは印鑑が身分証としての意味もあったためです。庶民の間では手の平に朱肉を塗って書面に押す、手形印が行われていました。

印鑑に用いられる素材の特徴や注意点

印鑑は用途の性質上、扱いやすく長持ちする素材が重宝されます。また、印面が長く同じ形状を維持できることも重要な条件です。木材は古くから使われている素材で、入手しやすく加工も容易という利点があります。木材が入手しやすい日本ではもっとも多用された素材と言っても過言ではありませんが、木材は水を吸うと膨張し、印面が変形する欠点もありました。

朱肉の色が沁み込んで見栄えが悪くなるのも木材特有の欠点です。また、水を吸ってから再び乾燥する際に割れてしまうことも多く、木製の印鑑は長く使うには不向きとされています。現在でも一部の高級素材を除き、木製の印鑑はゴム印の台木など安価な物として扱われています。

象牙など動物の牙や骨も印鑑の素材として古くから多用されていました。木材と異なり水に強く、油を吸うと輝きが増すという特徴があります。朱肉に含まれる油の作用で印鑑にツヤが生じ、使えば使うほど深みのある色合いになる点が好まれている理由です。

その一方で乾燥に弱く、冷房の風に当たっただけで割れてしまうことも珍しくありません。また、カルシウム質なので虫食いの被害に遭いやすい傾向があります。金や鉄などの金属は非常に固く、印面が破損する心配がほとんどありませんが、加工が難しいのであまり普及しなかったのが実状です。

現在ではチタン合金など特殊な金属が使われることもありますが、加工が難しい点は変わりません。プラスチック樹脂は量産が可能で加工も容易なことから、現在ではもっとも広く普及している素材と言えます。三文判など安価で購入できる印鑑のほとんどがプラスチック樹脂で作られています。

湿気に影響されず、ある程度の固さがあるので印面が破損しにくいのが利点ですが、熱に弱いので火気厳禁です。

捺印時のマナーについて

捺印の際は印面が綺麗に転写できるようにしっかりと押すのがマナーです。転写した印面にズレやかすれが生じていると、捺印の効力が発生しないことがあります。古い印鑑は長年の使用で印面がすり減っていることがあるので注意しなければいけません。

また、一部では捺印時に斜め押しと呼ばれる、特殊な押し方をすることがあります。斜め押しは名前の通り、印面を傾けた状態に転写する押し方です。本来なら印面を真っすぐの状態で捺印するのを敢えて斜めに押すのは、印面がお辞儀をしているように見せるためとされています。

目上の人が押した印面に対して斜め押しをすることによって、その人に賛同する、あるいは敬意を示すという意味があるのです。また、書類の内容を確認したが賛同できないという意味で上下逆さまに印鑑を押すケースもあります。

これらは俗にローカルマナーと呼ばれ、特定の会社や業界だけで通用するものです。一般的にはどのような場合でも印面が真っすぐになるように捺印するのが正しい作法とされているので、斜め押しについてはあまり気にしなくても良いと言えるでしょう。

印面は斜めに彫ることもある

個人名を記す印鑑は縦に文字を並べるのが普通ですが、文字の形状によっては潰れてしまう欠点もあります。印鑑を楕円形にする方法もありますが、円形の印鑑にこだわる人から見れば決して見栄えが良いとは言えないのが問題です。

文字を潰さずに彫る方法として斜め彫りがあります。印面内の文字を斜めに置くことでスペースが広くなり、文字が潰れません。画数が多い文字もはっきりした形で彫ることができるので見栄えが良い印面になりますが、その一方で作るのが難しい欠点もあります。

現在の印鑑作りはその多くが専用の工作機械を使っていますが、文字を斜めに置いて彫る機能を搭載している物は多くありません。また、文字のサイズやデザインの設定を変更する必要があるので、印鑑作りに慣れていない人には非常に難しい作業になってしまいます。

特注品扱いなので高額になるのも斜め彫りの欠点ですが、見た目のインパクトが強く印象に残りやすいという理由から、営業系の仕事を行っている人に重宝されています。

印鑑を綺麗に使い続けるために必要な掃除の方法

印鑑はその使い方から、どうしても朱肉や手垢で汚れてしまいます。本来なら使うごとに朱肉を綺麗に拭き取ることが大切ですが、つい掃除をさぼってしまい、気づいたら印面が朱肉で埋まっていたというケースも少なくありません。

汚れがこびり付いた印鑑は古い歯ブラシで印面を優しく擦り、柔らかいタオルで拭き取るのが正しい掃除の方法です。

印面を傷つけないことが何よりも重要なポイントなので、印鑑の素材ごとに掃除の方法が異なる点も理解しなければいけません。木製の印鑑は水を使わず、ゴム印は決して印面を擦らないなど掃除の方法を工夫する必要があります。

正しく扱うことで印鑑は長持ちする

日常生活の多くの場で使用する印鑑ですが、素材の種類や印面の彫り方は様々です。斜め彫りのように見た目のインパクトが強い彫り方もあるので、印鑑の世界は奥が深いと言えます。また、印鑑は用途の性質上、同じ物を長く使い続けるのが普通です。

愛用の印鑑を長持ちさせるためにも日頃から丁寧に扱い、綺麗な状態を維持することが重要になります。